俺は結局眠ることなく朝を迎えた。 はやはり相当疲れていたのか、昼近くになった今でもまだ眠ったままだ。 今朝、隊士全員が集められ、総悟の病のことが告げられた。一瞬にして屯所から色が失せた。 俺は正直、今起こっているすべてのことを一歩退いたところで見ている気がする。 悲劇の中に自分も居るはずなのに、居ないのだ。 総悟の部屋の障子をすべて開けてやって、新鮮な空気を取り込む。 俺は部屋の前の縁側で煙草の煙を吸い込んだり吐き出したりして、青い空を見上げる。





「いい天気だなァ」
総悟が起きてきて俺の隣に立つ。俺は煙草を地面に放ってぐしゃりと踏み潰して消した。
あーあー誰が片付けると思ってるんでィと笑いながら言う総悟に、俺は少なくとも俺じゃねェなと返す。
総悟は嫌な副長だ、と言いながら俺の隣に足を投げ出して座った。いつも通りだった。ただいつもより少しだけ穏やかだった。



「ねえ土方さん、俺ァもう死ぬでしょ」

欠伸をしながら総悟は言った。
ごろりと寝転びながら俺は言った。

「ああ、そうだな」



ゴウンと大きな音を地面に響かせて屯所の上を天人の迷惑な乗り物がどこかへ飛んで行った。
総悟は嘲るようにくだらねえなァと笑った。ああ本当にくだらないと思った。
寝転んで見上げた空ではさっきまで雲に覆われていた太陽が顔を覗かせていて、目に痛いほど眩しかった。










(以前の様な日が戻った気がした。そんな勘違いを、一瞬)