「………っは、」



私は今まで聞いてきた声の中で一番艶っぽいと思う声を聞いて、 ふと晋助の顔を見るように視線だけを上げた。 眉を寄せて、きゅっと結んだ唇を時折薄く開いて熱い息とともに艶めかしい声を漏らす。 その表情がどうしようもないくらい愛しくて愛しくて、 だから私はこの口いっぱいに銜えた息苦しさにも吐き出しそうな不快な味にも耐えることが出来る。 歯を立てないように精一杯気遣って、晋助にもっともっと快感を味わって欲しいと、 舌を這わせて彼の声が漏れる箇所を探る。 ある箇所を舌先が突いたとき、ぴくんと晋助が震えた。



「ここ?」



銜えたまま尋ねると、「そのまま喋んな」といつもの低い声で言われた。 だけどやっぱりどこか甘い声。 そんな声を出させているのが自分だということが嬉しくて、 プライドが高くて誰の指図も受け入れないというような晋助を支配しているような気分になる。 もっともっと溺れさせてやりたい、もっともっと鳴いて欲しい。 私はさっき見つけた彼の感じる箇所に舌を這わせる。 いやらしく舌全体で舐めてみたり、舌先を器用に使って突いてみたりすると、 晋助からだんだん余裕の無い熱い呼吸が聞こえてくる。



「っ、あ、やべ、もういい、」



苦い味が口の中に広がってきて、もうそろそろかな、と思ったとき。 晋助が私の頭を掴んで、自分から引き離した。
ふーっと長い息を吐いた晋助はそのまま私を押し倒し、 私の口の端を伝っていた唾液の痕を親指で拭った。
晋助を絶頂まで導くのにもう少しだったのに、それを阻止された私は気に食わなくて口を曲げた。



「イッてもよかったのに」
「バカかてめーは」
「なんでよ」
「吐き出すヤツがよく言うな」
「…飲むのに、ちゃんと」
「飲んで貰わなくても結構だ」



でも、と反論しようとした声は晋助の唇に呑まれた。
互いの唇を貪り合うようなキスを交わしながら、晋助の手が私の脚を開かせる。
長い指は私の中心部に触れ、そこが濡れて溢れていることを確認すると晋助は唇を離してにやりと笑った。



「濡れてんじゃねーか」
「だって、っあ、」
「俺の銜えながら興奮してたってか」



晋助の指が私の中に入り込んできて、曲がったり擦ったり、私の中をいろいろに探る。
私はただ抑えることを諦めた品の欠片もない声ばかりを零して、晋助にしがみ付いた。
晋助はもうすっかり私の中のイイ所を知っているから、私はすぐにでも達してしまいそうになる。
それじゃあだめ、いや、



「ね、え、晋助…」
「何だよ?」
「やだ、…っ、ゆび…っ、」
「指が嫌なら何だ」
「おねが、い…っ!」



ぎゅううっと強く強く抱きつくと、晋助はしょうがねェなと意地悪く笑って私の中から指を抜き、 背中に回っていた私の腕を解いて手を重ねる。晋助の手は大きくて熱い。 私がその手と指を絡めて強く握ったとき、晋助は私の中に自身を沈めた。 息苦しいくらいいっぱいに満たされて、思わず高い声を吐き出してぎゅっと目を瞑る。



「はっ、んんっ、あつ、いっ、」
「爪立てんな…っ」
「だ、って、んあっ、!」
「………っく、」
「は、ぁっ、や、晋助、っ…!」



ベッドの軋む音が響く。 晋助が舌を伸ばして私の唇を舐め、私はそれに口を開けて応える。 この上なく卑猥な水音と、粘膜の擦れる音が部屋を満たして、 すっかり羞恥など忘れ去ってしまった私にはもうその音すらにも快感を感じた。 開けた口から舌を出すと晋助の舌がそれを舐めて、唇で食う。 喉の奥から声が零れて、開いた口の端から唾液が伝っていった。 晋助が繋いでいないほうの手で私の頭を包み込むようにくしゃりと撫ぜる。 快楽の絶頂は突き上げてくる。



「あっ、あぁ、っ、もっ、無理っ、…!」
「、…っ」
「あぁ、っ、いっ、んんっ!!」



びくっと一瞬腰を浮かせ、体が震えた。 私が達してすぐに晋助がどくんと私の中に熱い欲望を吐き出す。















どくどくと中に熱い液体が流し込まれて、それがおさまった頃に晋助は私の中から出て、
そのままどさっとのしかかってきた。乱れた呼吸はなかなか整わない。
声を出すのも気だるいくらいで、気の抜けた声で私に覆い被さる晋助に言う。



「…重い」
「うるせェ」
「うるせェって…もういいや、つかれた…」




明日学校だよって言ったらめんどくせーって晋助が言った。
意識がぼーっとしてきて目を閉じる。
上に覆い被さる晋助が重かったけど、直に伝わる体温が心地よくて簡単に眠りに落ちた。







モルヒネ
(貴方と言う麻薬)