目が覚めたら不思議なことが起こっていた。 わたしの中がいっぱいに満たされているのがわかった。 体を起こして両手を見てみる。 溢れてくものをぎゅっと握り締める。 そう、溢れている。大きくなりすぎて、 わたしの呼吸から瞬きから揺れる髪の先の一つ一つから、ふわふわと溢れている。 となりを見たらラビがすーすーと寝息を立てて静かに眠っていた。 ふふ、と溢れるものが笑いになってこぼれた。 服を着ていないありのままの自分の全身からラビが溢れてて、膝を抱えてぎゅうっと自分自身を抱き締めてみた。 どうしたって笑顔がこぼれる。 頬、髪、耳、首、おなか、爪先、わたし全部にラビが触れた感覚が鮮明に残っていて、 今まできらいだった自分も全部愛おしく思えてしかたない。 ずっとずっと手を握ってくれてた力の強さも、囁いてくれた声も、重なった唇も、全部全部覚えてる。残ってる。 ふわふわ。わたしに満ちるものが小さな泡のようなものになって溢れて浮かんでいくみたい。ああそっか、これを、




「なに笑ってるんさ?」




自然にこぼれてしまう笑みに頬を緩ませ続けていたら、 知らない間に起きていたラビがそんなわたしを見ていた。 肘を立てて頭を支えながらわたしを見ているラビに、なんだかきゅーっとなった。 わたしがまたふふっと笑うと、なにさーとラビも笑った。 布団を頭から被りながらぼすっと後ろに寝転んでシーツに溺れ、布団から顔を出す。 横を見たら当然だけどまだラビが居てくれて、それはしあわせな夢なんかじゃなくて、 わたしはまたふわふわ満ち足りたなにかが溢れていくのを感じた。 なんだか確かめたくなって、ぎゅうーっと強くラビに抱きついてみた。 あったかい。ラビの匂い。甘えっ子ーと笑ってラビの大きな手がわたしの頭をぐしゃぐしゃ撫でる。 ああまた、ふわふわふわふわ。




「ねー、ラビ」
「ん?」
「…なんでもなーい」
「なーにさー」
「ラビー」
ー」





名前を呼ばれたらどうしてかすごく嬉しくてまた笑えて、わたしはラビに名前を呼ばれる瞬間がいちばんすき って言ったらラビは俺もが俺を呼ぶ瞬間がいちばんすきって言った。 好きで好きで好きで、たまんないって思った。 髪も温度も抱き締める緩い力も手を握る強い力も、ぜんぶが。 昨日の夜ようやくラビの全部がわたしのものになった気がして、それが今、嬉しくてたまらなくて。 きゅーっとなってわたしの中で溢れるくらいいっぱい満ちているもの、ふわふわ溢れる、これがしあわせなんだ。 わたしは顔を上げてラビに一瞬のキスをした。それからまたラビの肩に顔を埋めて強く抱き付く。









ラブラドール
(もーーーーラビだいすきっ!!!)