昨夜、土方さんはお偉いさん(だれかはよく知らない、どうでもいい)と話をしてきた帰り、 何人かの浪士に襲われたらしく返り血にまみれて帰ってきた。 なんだか腕を斬られたようで、土方さんは自分の部屋で 昨夜女中に巻いてもらった、すっかり血の滲んだ包帯を解き、傷を不機嫌そうに眺めていた。 私は夜中のことを思い出す。皆が寝静まった頃、副長室から聞こえた女の声。 冷蔵庫に入っていた「山崎」と書かれていたのを無視してかっぱらってきた アイスを舐めながら傷に触れている土方さんに声をかけた。




「あんな激しいセックスしたりするからですよ」




どきっと土方さんの肩が跳ねた。
眉間に皺を寄せた顔が振り向く。私は無表情のままアイスを食べる。




「大量の血を見た後は乱暴に女を抱きたくなるものなんですか、男の人って」
「…お前か」
「私、包帯巻くの手伝ってあげましょうか?」




にこ、と笑う。
土方さんは「はっ」と笑ってガキはアイスでも食ってろと言った。
私は少しも動じない土方さんになんだか腹が立って、
だけどそれは表に出すことなく土方さんの隣に座った。
そして皮膚の裂けた傷口を覗く。




「うわ、これ開いちゃったんじゃないですか」
「ほっとけ」
「ほっといて欲しいなら堂々と遊女連れ込んだりしないでください」
「………」
「人を斬った後はいつもそう、汚い女の声で眠れないんです、私は」




すくっと立ち上がってそれじゃあ、と部屋を出た。
アイスはもう棒だけになった。
その棒を銜えて廊下を歩いていると、
土方さんの部屋から舌打ちが聞こえた気がして私は少し苛立ちが収まったのを感じた。






(特に意味の無い話)