「すれ違ってたなんて、よく言えるね」



怒りか悲しみか、震えた声につい彼女と目を合わせることを避けてしまう。 ガシャンと音がして、俺の視線がちょうどあった床にハサミやボールペンなどが散らばった。 ペン立てが机の上から落下したらしい。 視線をするりと上げてを見ると、かちりと目が合ってしまった。 しまった。もう逸らせない。 真正面から罵倒でも何でも受け入れようと心の準備を整えたとき、思いがけずの方から視線を逸らした。 その逸らされた視線が刺したのは彼女の真後ろにあった、物の散らかった机。 はその机の上にある物をすべてガラガラと滑らせるように落としていく。



「おい、」



がしっと腕を掴んで止める。
けれど暴れるように振り払われ、机の上のジャンプなどの雑誌を投げつけてきて叩かれた。
コップは中身を零して割れ、並べてあったものが次々落とされていく。
雑誌など紙類は放り投げられる。



!」
「っ、うるさい!」



ついには電話まで落下し、彼女が電気スタンドに手をかけたところで 俺は両腕を掴んで無理矢理に止めた。 はあ、と大きく息を吐いたはようやく暴れることを止め、肩で大きく呼吸をする。 「離して、っ…!」 言われても俺は彼女の腕を掴んだまま離さなかった。 ばたばたっ、と今まで机の上に整頓されて並んでいたモノたちがそのまま乱暴に散らばっている床に 大粒の涙が零れ落ちた。の涙だ。 俺は驚いて思わずぱっと腕を離す。がくんとが崩れ落ちた。



「銀時は、いつもそうだよ、」



座り込んだの、小さな肩が震えている。
床の上の雑誌が彼女の涙を吸い込んだ。

愛しいと感じる。
好きだと、これが愛しているという感情なのだと。


まただ。
また終われない。


だってほらまた、俺はを抱き締めてしまった。



「ごめん」






遭難
(「救助して。」)