カーラースー なぜ啼くのー



烏はやーまーにー



かーわいーい、なーなーーつーの



子があるかーらーよー









「わ、寝たアル」
「ほんとだ」





私が七つの子を歌いながらしばらく部屋の中を歩き回っていると、 腕の中のまだ小さな小さな赤ちゃんはすっかり泣き止んで眠ってしまった。 ゆっくりと椅子に座ってこの子を抱いたまま背中を優しくぽんぽんとあやし続けているところを 神楽ちゃんと新八くんは珍しそうに覗き込んで、ほっぺたをそっとつついたり、指を強く握られては嬉しそうに騒いでいる。 今日、病院から退院してきた私は朝銀時と一緒にこの万事屋に帰ってきたわけだけど、 銀時は仕事があるからって出かけてしまって、神楽ちゃんと新八くんとこの子と一日を過ごした。 銀時がこの子たちをあまり病院に連れてきてくれなかったせいで、私は神楽ちゃんと新八くんに会うのは久しぶりで、 この二人も赤ちゃんに会うのが二度目くらいだった。 生まれたばかりのころに一度来てくれただけで、あとは銀時が連れて行ってくれなかったのだと文句を言われた。 銀時はこの子が相当かわいいのか、仕事へ行くと言ったあともなかなか出て行かないで、 うっとうしいくらい何回も神楽ちゃんと新八くんに悪いことするなよと言いつけて出て行った。 すうすうと耳元で寝息を立てているこの子を、二人は夢中な顔をして見ている。





「そーえば銀ちゃん最近その歌よくうたってたヨ」
「え?」
「七つの子、うたってましたよ」





まだ入院していた時のことを思い出す。と、私は確かにこの歌をよくうたっていた。 銀さんがCM以外の歌うたうなんて珍しいと思ってたけど、そういうことだったんですねと新八くんが言う。 私は私のいないところでそんな似合わない童謡を口ずさむ銀時をとてもとても微笑ましく思って、思わず笑みをこぼしてしまった。





「七つの子?」
「この歌の題名だよ」
「七つの子って言うアルか?銀ちゃんカラスのうたって言ってたネ」
「ああ、僕も昔はそう思ってたけどね」
「私も新八くんくらいの時に知ったかも」
「銀さんまだカラスの歌だと思ってるんですね」
「カーラースー なぜ鳴くのー」





すっかり日も暮れて、ガラッと玄関の戸が開く音が銀時が帰ってきたことを知らせる。 七つの子を歌いながら私の腕の中の子を囲んでいる二人と、おかえりなさいと微笑んだ私を見て、銀時はなんだか情けない顔をした。





「やべー俺いま幸せすぎて泣けるわ」












続幸福論。
(今最高に幸せだって、声を大にして叫びます)