お昼に時間が空いたから久しぶりに銀ちゃんとお昼ごはんでも食べようと思って万事屋の前まで来たけれど、 戸を叩いても誰も出て来ない。出掛けているのか、昼寝でもしているのか。 鍵までかかっているから出掛けているのかもしれないと思いながらも合鍵で開けて中に入る。 銀ちゃんの靴は普通に置いてあったけど、なんだか部屋は薄暗い。 やっぱり寝てるのかな、と不思議に思って奥まで進んでいくと、何か人の声が聞こえる。





「銀ちゃん?」





なんだいるんじゃない、と笑いかけようとしたらリモコンを持った銀ちゃんが飛び跳ねて驚いた。 私はカーテンの閉まった薄暗い部屋でピカピカと光るテレビに映るものと、流れている声から、 銀ちゃんが何を見ていたのかすぐに理解した。焦りに焦った銀ちゃんが違う違う違うんだってとか言いながらビデオを止めようとするけれど、 驚いて床に勢いよく落としたせいで電池が飛び出したリモコンになかなかうまく電池を戻せなくってあたふたしている。 その間も画面の中では着物の乱れた女の人が耳にまとわりつくような甘い喘ぎ声を上げている。 私は床でガチャガチャとリモコンに電池を戻そうとしている銀ちゃんに駆け寄って胸倉をつかんだ。





「なにしてんのー!!!」
「ぐっ!」
「こんな真っ昼間からなに見てるの!?」
「おまっ、なんでいんの」
「お昼ごはん一緒に食べようと思ったのに、なのに、なのに、なに真っ昼間からAV見てんのよー!!」
「声がでけーよバカ!下に聞こえンだろォォ!」
「私じゃ足りないんだー!!」
「ちょっ、わかった、いったん落ち着け





銀ちゃんの大きな手が私の口を塞いで私は不本意ながら黙った。 空気の読めない甘い声が流れて来るテレビの方に視線をやると、声を上げているのが見覚えのある女の人だと気付く。 銀ちゃんは私の視線がテレビに向けられている事に気付いてやべっ、と慌てて私から離れてテレビの主電源を切った。





「……結野アナ?」
「いや……」
「は?今の完全に結野アナだったじゃん!銀ちゃんの大好きな!AVにも出てるの!?」
「ちげーよ、そっくりさん。似てるよな?間違えるよな? 長谷川さんに借りたんだけどあまりに似すぎで俺も結野アナのつもりで見ちゃったよ、ナースも似合うよな結野アナ、なんつってさ」
「テンション上がってんじゃねーよ!」
「ぐふ!」





鞄を投げつけたら顔面に当たって鞄が吹っ飛んだ。 鼻を押さえて唸る銀ちゃんを他所に、少し落ち着いた私は冷静に考える。最後にしたのはいつだったっけ。 一週間…いや二週間前?三週間前?結構前だ。その時は確かちょっと酔っていたせいで、記憶が曖昧だ。 この頃なかなか会う時間を設けられなかった私に問題があるのも確かだけど、 でも結野アナで抜こうとしなくてもいいじゃない、ていうか、銀ちゃんがそんなに結野アナ好きだったなんて知らなかった。 デッキからビデオを取り出して机の上に乱暴に置き、リモコンに電池を戻した銀ちゃんが一息つくようにソファに座ったのを目で追うと、 銀ちゃんはバツの悪そうな顔をして目をそらし、すいませんでしたと呟いた。私はふっ、と仏の笑みを浮かべる。





「いいのよ銀時、仕方がないわ男の子だもの」
「ちょっと怖いんですけど。さっきまで怒鳴り散らしてた奴が言うセリフじゃねーよ、いっそのこと怒ってくれ」





もちろん本当に許してるわけではないけれど、銀ちゃんがAV(しかも結野アナ似の女)で抜こうとしていたことは ショックっていうか悔しいけど。だって私と結野アナじゃ比べ物にならないから。私は大人の色気も持ってないし、胸はぺったんこだし、子供っぽいし。 床に座り込んだまま落ち込み始めた私を見て、銀ちゃんが行くか、と言うから私は顔を上げてどこへ?と訊く。 昼飯食いに行くんだろ、と言われてここへ来た本来の目的を思い出した。お腹が空いてたことなんてもうすっかり忘れてた。 というか、気分はなんだかもうそれどころではない。私は立ち上がって銀ちゃんの隣に座り、距離を詰めて密着した。 「え なに?」それから手を伸ばして銀ちゃんの股間のそれを布越しにそっと握る。



「…ッダァァ!!」
「まだこんなに元気だよ銀ちゃん」



突然のことに奇声を発した銀ちゃんに、私はどこかいい気分になった。 普段握られてばかりの主導権を奪ったような優越感。 ねえ銀ちゃん、と手の中のそれを撫でながら耳元で強請ると、銀ちゃんは両手で赤くなりかけた顔を覆った。



「あーもうとんでもねーわお前」



そう呟かれた次の瞬間には私はひょいっと抱きかかえられて、そのまま布団が敷きっ放しの寝室に運ばれる。 乱暴に、だけど優しく布団の上に押し倒されて、噛みつくようなキスに呼吸を奪われた。 貪るように唇を食われながら器用に侵入してくる舌が、頬の裏側を舐めたり歯をなぞったりする生ぬるい感覚にはいつもぞくりとする。 けして気持ちがいいことじゃないはずなのに、私はどうにもたまらない気持ちになるのだ。私には銀ちゃんのすべてが心地いい。 そうして重なる唇の合間に酸素を吸い込んでは、その心地よさに翻弄されている間に、 帯を解かれてもうたいした意味を為さない着物は私の下でぐちゃぐちゃになっている。 脱がされながらも、皺になっちゃうとか汚れちゃうとか現実的な思考が頭の隅で生まれては呑まれていく。 パチンと軽くブラジャーが外されて、離れた唇が下りて行って胸に厭らしく吸い付くのに、私は小さく声をこぼす。 銀ちゃんは右の方に舌を滑らせて、左の方を熱い手で弄びながら意地悪く言う。





「なかなか育たねーなァ」
「うるさい…ッ」
「でも左の方がおっきくなってるって知ってた?」
「銀ちゃんが左ばっかり、触るから、」
「揉むとでっかくなるってあれマジだな」





そんなところで喋られると銀ちゃんの息がかかったり舌が触れたりして、頭の奥が痺れるみたいだった。 熱い呼吸をしながら痺れる頭で銀ちゃんがさっきまで見ていたビデオのことを思い出す。 男の人ってどうしてあんなもの見るんだろう、欲求不満だったなら、私を呼んでくれたらよかったのに。 どんな時間を縫ったって会いにいったのに。 さっきまで胸を弄っていた手が太股を撫ぜて私はもどかしさに息苦しくなる。ああだめだ、頭が働かない。





「銀ちゃん…」
「ん?」
「私にやらせて、」





上半身だけ脱いでいつもの黒い服を床に放り捨てて、再び覆いかぶさってきた銀ちゃんの両肩に手を乗せ、 上からどかすように押して起き上がる。なにを?と不思議そうに、 立て膝の状態の銀ちゃんに、私はジッパーを下ろしてズボンを下げた。 積極的、と頭の上で銀ちゃんが笑う。さっきまであんなビデオ見てたせいか、 十分な質量になっているものに手を添えて、先を濡らしている透明な液体を唇を寄せて舐めた。 口を大きく開けていっぱいに咥えこみ、裏筋につうと舌を這わせると銀ちゃんがぴくっと震える。 私は口でするのが正直好きじゃない。苦しいし、喉の奥まで咥えこむと涙が滲む。 銀ちゃんは私が苦しいってことを知っているから、口でしてほしいとは言わない。 でも私は銀ちゃんが気持ち良くなってくれるのは何よりうれしいから、どんなことでもしたいと思う、いつでもそう。 甘く歯を立てたり唇を窄めて先端を吸ってみたりすると、銀ちゃんが私の頭を両手で掴む。 押し殺した声と苦しそうな呼吸がたまらない。執拗に舌を這わせながら視線を上げて銀ちゃんを見ると、 快感に耐えているような切なげな表情をしている。

私は銀ちゃんの、イクのを我慢しているときの顔がすごくすごく好きだ。 私のすべてを受け入れてくれるように優しく笑う顔も、たまに見せる真剣な表情も、 安心しきった間抜けな寝顔も、子供みたいに悪戯っぽい笑顔も、全部全部大好きだけど、 している時の顔が、私はなにより好きかも知れない。だって、私しか知らない顔だから。 色々に舌や唇を使っていると、私の口の中のそれはさらに質量を増してきて、小さく震えながら限界を知らせる。 銀ちゃんが苦しそうな声で私を呼んで、頭を引き離そうとする。



「待て、ッ、、」



銀ちゃんはいつも私の口でイクのを嫌がる。 こんなものお前に飲ませられないって言って、私の口に出したことはない。だから今も必死で我慢しているんだと思う。 私はいつも銀ちゃんがイキそうになると言われるままに頭を離していたけれど、今日は違う。 私は銀ちゃんのものならなにもかも受け入れるってこと、平気なんだってこと知ってほしい。 構わず私が銀ちゃんの敏感なところを舌でなぞり続けていると、 銀ちゃんは抵抗する力も弱くなってきて押し寄せる快楽に抗うにはもうギリギリのようだった。



「だめだって、出る、…ッ」



びくっと脈打った銀ちゃんは私の口の中で果てた。 同時に注ぎ込まれる粘ついた液体に私は思わず顔をしかめて、その苦しさに泣き出しそうになった。 それでも涙はこらえて口の中に銀ちゃんの体液を閉じ込める。口の端をつう、と閉じ込め損ねた白濁の液が伝う。 飲み込んじゃえ、と思うのに喉が動かない。全身がそれを拒絶しているようだった。嫌だ、不味い、苦い、なにこれ、嫌だ嫌だ。 銀ちゃんが私の口で出さないようにしていた理由がわかった。でも吐き出したくはない。 欲望を吐き出して冷静になった銀ちゃんが状況に気付き、慌ててティッシュの箱を引き寄せて何枚かティッシュを取って私の前に差し出した。





「これに吐け、ホラ」

私はほとんど意地になってそれを飲み込もうとして、吐かないように両手で口を押さえながら首を横に振る。



「飲まなくていーから!つーか飲むなそんなもん!」
「〜〜〜〜〜……っ」
「ほら、いい子だからペッしなさい!銀ちゃんが悪かったから!」
「ッ、けほ、ゲホッ!!」




どうしても飲み込めなかったそれを私は銀ちゃんの手の中のティッシュにすべて吐き出した。 やっと呼吸が出来たけど、銀ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 どろっとした液体の不快な味も感覚もまだ口に残っていて気持ちが悪い。 それでも飲み込みたかったから、不思議。銀ちゃんはティッシュで私の口の端を拭いながら、 だから離せって言っただろ?と優しく言うから私はじわりと涙目になってしまった。





「不味かった?」
「銀ちゃんのなら平気だもん……」



つらかったけど、銀ちゃんのなら平気って言うのは事実だった。
全部飲んであげられなかったことに少し落ち込むと、銀ちゃんがちゅっと小さくキスをしてきた。




「もう何なのお前、どーなっても知らねーよ?」




角度を変えながら何度も唇を重ねた後、私の口の中の不快な味を絡め取るかのように銀ちゃんの舌が動きまわる。 私は呼吸をするので精一杯になりながら、ゆっくりと銀ちゃんの腕に頭を支えられながら押し倒されていった。 口腔中を這いまわった後で離れた銀ちゃんは、よくこんな不味いもん飲み込もうとしたな、と優しく笑って私の頭を撫でた。 それから何の予告もなしにするりと私の下着を取り払って中心部に触れて、私はびくっと体を跳ねさせた。





「我慢してたのチャンの方だったんじゃね?」
「ちがっ……」
「こんなんなってっけど」
「やだ…!見せないで……っ」





銀ちゃんが濡れた指を見せつけて来るから、私は目を瞑って顔をそらした。 すると銀ちゃんが一回頬っぺたにキスをして、一番敏感な突起を指で転がすから、 私は思わず抑えきれない声を上げて背中を仰け反らせた。 どれだけ重ねても声を上げることはどうしようもなく恥ずかしくて、私は両手で口を押さえて耐える。 それでも銀ちゃんはいつも私の手を剥がして声を聞きたがる。 長い指が濡れた場所に無遠慮に侵入してくると、私は熱い息を吐いて体を震わせた。





「ん………ッ、やだ、ァ……!」
「やだやだってお前、イイの間違いだろ」
「…はっ、………んん…」
「声抑えるなって」
「だって、…まだお昼……っ」
「誰もこんな真っ昼間からやらしーことしてるなんて思わねェから安心しろ」





自分で言ってて気づいたけれど今はまだ外は明るく太陽が照っているお昼時なのだ。 そう思ったら急に恥ずかしくなってさらに体が火照るのを感じる。カーテンが閉まっているのが本当に救いだった。 明るい場所でこんな姿を見られたら恥ずかしくてどうしようもない。 余計に声を抑えなければと思うけれど、それが逆にドキドキして体の芯を疼かせてしまう。 銀ちゃんの指が私の内側を掻き回す感覚にどんどんぼんやりしてきて、 吹っ飛びそうに何もかもがどうでもよくなりながら目を開けて銀ちゃんを見た。 すると私の中を動き回っていた指が抜かれる。同時に物足りなさに小さな声を吐く。

銀ちゃんがコツンと額を合わせて笑い、限界?と尋ねてくるのに頷くと、銀ちゃんは俺も限界、と言って 近くのタンスの引き出しの奥から取り出してきたゴムをいつの間にか再び元気になっていたそれに慣れた手つきで付けた。 私は大きくなったそれを見て息を飲み、少しだけこわいと思ってしまう。 初めてなわけじゃないけど、あんなものが自分の中に入ってくるのだと思うと不思議で、内側から壊されてしまうんじゃないかと思う。 でもそれが銀ちゃんだから、銀ちゃんになら何をされたっていいと思えるから私はそれを受け入れることが出来るのだ。 そう言ったらきっと笑うんだろうな。 無意識に閉じていた私の足を銀ちゃんが開かせて、濡れて潤った箇所に腰を進めて来る。 息が止まりそうな圧迫感に私は思わず反射的に力を入れてその侵入を拒んでしまって、銀ちゃんがつらそうに息を吐く。





、力抜けって」
「できない…ッ」
「いやできるお前ならできるはずだ、せーの」
「…ァ、…やぁ……!」
「ちょっ、力入れてどうすんだよ、息止めんなゆっくり吐け」
「はぁ……、ン、銀ちゃっ…」
「よしよし、ゆっくりな」





狭いそこを押し入ってくる銀ちゃんを私はゆっくり受け入れながら途切れる呼吸を続ける。もう何が何だか分からない、頭は正常に回らない。 苦しくて苦しくてたまらないのに、時々聞こえる銀ちゃんの苦しそうな声が愛おしくて、私はもっと奥深くまで銀ちゃんを飲みこもうとする。 知らない間に滲んでいた汗で額にはり付いた髪を銀ちゃんの手がどけて、その愛しい手つきに泣いてしまいそうになった。 汗ばんだ大きな背中に腕を回して、縋りつくようにぎゅうっと抱きつけば、私は全身、 本当に自分のすべてが銀ちゃんに満たされた気がして、生きている中で感じる一番大きな安心感を得る。 私だけの銀ちゃん。誰よりも、私が銀ちゃんの一番一番近くにいる。 ようやく奥まで届いたのを感じて、息をするのを忘れるくらい苦しいくらいに満たされた。 耳元で熱い息を吐いた銀ちゃんの熱い舌が耳を這って、甘噛みするものだから、私は全身が粟立つような感覚につい身を固くした。





「…ッ!、おまっ、なんでそんな耳弱ェの、」
「しらない、っ、あ!、やっ……」
「苦しい?」
「んんっ…、苦し………」
「狭ェもん
「銀ちゃ…ッ!もっ、だめ、…!」
「まだ早いっておまえ、俺まだ元気だから」
「はァ…!だって……、気持ちい、い…ッ!」





覆いかぶさってる銀ちゃんにしがみついて揺さぶられながら、私は回らない頭で言葉の浮かぶままに吐き出した。 銀ちゃんが私の耳元で、ホントとんでもねーわ、と低く笑う。 それから奥まで深く突き上げるから、私はもう圧迫感による苦しさよりずっと気持ちよさの方が勝っていて、 羞恥なんてものはすっかりどこかへ捨て去られた為に抑えることを忘れてしまった声を上げながらただ全身で銀ちゃんを感じた。 ああなんかもう真っ白だ。銀ちゃんしかない、残ってない。





「銀ちゃん……!」
「なーに」
「もォ無理、……銀ちゃ、ン…!」
「大丈夫だって、ここにいるから」
「銀ちゃんッ、銀ちゃん、ッ、銀ちゃ………ァ、!」
「どんだけ俺のこと好きなんだよおまえ」





好き。すごく好き世界で一番好き宇宙で一番、誰よりも誰よりも好き。 そう言いたくてももうそれは押し寄せる絶頂のせいで声に出すことが出来なくて、 代わりに抑えきれない、声にならない声が一際高くこぼれた。 全身を走る快楽にぎゅっと目を瞑って背筋を反らせ、体を震わせながらぎゅうっと強く強く銀ちゃんにしがみついた。 するとそれに呼応するように銀ちゃんが切ない声を漏らして私の中で果てた。 脈打つそれが吐き出すものは薄い膜に隔たれて私の中に直接注ぎ込まれることはないけれど、その熱さは中で伝わる。 全部溶けてしまいそうだ、頭の奥も、私の中身も全部。ちなみに私は銀ちゃんの声が大好きだけれど、 その中でもこの耳元に落される切なげな色っぽい声が特に好き。





銀ちゃんは私の中から自身を引き抜いて処理をした後、大きな息を吐いて私の横に倒れこんだ。 なにもかもがどうでもいい、すべて終えた後の特有の気だるさに襲われながら、私は静かに呼吸を繰り返す。 言いようのない、幸せというか、混沌とした気分だ。このまま眠ってしまいたい。 いつもなら布団に入って、銀ちゃんのそばにいられる幸せを実感しながら一緒に眠りに着くところだけど、 段々と冷静が戻ってきた私は今がお昼だと言う事を思い出す。 なんだってこんな健康的な時間に、と冷静になればなるほどどんどん恥ずかしくなってきて、 体の下でぐちゃぐちゃになっていた着物を羽織って起き上がる。





「………なに今更隠してンの」
「! だって、…恥ずかしいじゃん」
「照れんなよバカ、こっちが恥ずかしくなるんですけど」
「銀ちゃんはもっと羞恥をもって生きた方がいいよ」
「何言ってんだよ、常に持ってるからねそんなもん。両手いっぱいに持ってるからね羞恥」
「…今全裸の人がよく言うね」




ちゃんのエッチ、とか言いながら銀ちゃんは床に脱ぎ捨ててあった衣服を引っ張ってきて着始めた。 私も下着をつけて皺くちゃになった着物を整えながら着直す。帯を締めた時に戻ってくる現実感。 すっかり服を着てだらしなくあくびをしながら頭を掻いている銀ちゃんに、私は我ながら馬鹿な質問をしてみる。





「銀ちゃん、私と結野アナどっちが好き?」
「……なんで女ってすぐそーゆうこと訊くの?」
「いーから!」
「そりゃおめー………そんなこっ恥ずかしいこと言えるか」



トン、と人差指で私の額を小突いた銀ちゃんは立ち上がって腹減ったなァと伸びをした。
私が不満な顔であんなAV燃やしてやる、と言って寝室を出て行ったら、銀ちゃんにがしっと片手で頭を掴まれた。




「待て待て」
「だって神楽ちゃんが見たら大変でしょ!」
「わーった、あれはちゃんと長谷川さんに返します、返しますから」
「今すぐね?」
「い!?」
「なに?」
「…わかった、今すぐな」




にこっと満足げに笑った私を見て、銀ちゃんは大げさなため息をつきながら、 どんだけ俺に愛されれば気が済むんだよお前、と言ったから、私は愛してるよ銀ちゃん、とますます笑った。











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